コロナウイルスの影響でイベント中止が相次いでいる。
昨日また大工のSさんと、近所の中華屋さんでお昼を食べたとき、2年前わたしがSさんと知り合ったイベント、「野沢エンデューロ」主宰者のAさんが、こちらも毎年開催している、「MTBフェスティバルin緑山スタジオ」も中止になったと言っていた。
Aさんと親しいSさんら仲間たちが、毎週末集まってコースを作っていたので中止は残念だが、東京ドームのように閉鎖された空間ではなく、広い野原で行うイベントを中止にする必要があったのか?
(緑山スタジオとはテレビ局のTBSが横浜にもつ広大な「空地」で、むかしなら「風雲たけし城」、最近ならマッスルイベント「サスケ」のロケ地にもなっている)
とりあえずラリークランキングは開催されるようで安心した(出ないけど)
参加者の皆さんはハアハアゼイゼイ、日ごろたまった「毒素」を思い切り、吐き出してきてくださいネ💛
話し変わって最近の、「e-MTB」(電動マウンテンバイク)の進化が止まらない。
去年お山で「ミヤタ リッジランナー」に試乗したとき、
ふだんヒイヒイ言っている登り坂が、「まるで平地」のようにスイスイ登れて驚いた。
でもその車重とバランスの悪さゆえ、下りは「おっかなびっくり」乗っていたような。
電動に対する規制が厳しい日本と違い、e-MTBは欧米メーカーの独壇場、
e-bikeMTBの世界選手権も開催されて、スペシャライズドの新型e-bike「tuubo LEVO」が優勝している。
このマシンはe-MTBの平均重量が20キロ以上に対し、17kg台という驚異的な数値(電動でないフルサスのダウンヒルMTBが15kgくらい)
今まではボテッとしたバッテリーを抱いて、「子持ちシシャモ」のようなルックスが多かった電動MTBだが、最近は「フレーム内蔵タイプ」が主流で、初めて動画を見た人は「電動」と気が付かないと思う。
お値段は最上位モデルが170万円と、ホンダアフリカツインが買える価格だが、モーターやバッテリーの小型化が進んで大量生産できれば、そのうち2~30万円で買えるようになるんだろう。
メーカーも販売に力を入れているようで、大きな自転車店やメーカー直営ショップでは、頻繁に試乗会が開かれているらしい。
そんないいとこだらけに思えるe-mtbだけど、じつは深刻な問題が起き始めている。
先日逗子でご一緒した地元ライダーのMさんも
「狭い登山道を電動MTBがすごい勢いで登ってきて、ハイカーとぶつかりそうになっていた」
のを間近で見たそう。
そのライダーはヘルメットをかぶっておらず、服装も上下ジャージ姿
「髪の毛が真っ白だったので、たぶん高齢者かも?」
とのことだが、自走なら時速5kmくらいがせいぜいの激坂を、
「たぶん20km/hくらいでぶち抜かれました」
って。
これは神奈川に限らず、関東近県の山でも起きていて、山の地権者らと協力(説得?)しながら、里山ライドの普及活動をしている、個人経営の自転車屋さんや地元のMTB愛好会も、
「電動MTBのおかげで、せっかく地元の人の理解を得て作ったフィールドが壊される」
と強い危機感を抱いているらしい。
すでに神奈川の陣馬山や高尾山周辺は、自然破壊と登山客とのトラブルから、「マウンテンバイク禁止」になっている。(16条)
昨今のハイキングやトレランブームから、自転車と歩行者のトラブルは後を絶たず、今後ますます禁止エリアは広がりそうだったが、電動MTBの出現がこの禁止運動に、いっきに拍車をかけているらしい。
メーカーや大手自転車店の売り文句は
「登り坂でも20キロ出ます」
とか
「今まできつかった登りもラクチン」
などなど、体力はあるけどおカネがない若者よりも、体力の衰えをおカネでカバーしたい、中高年をターゲットにしているような。
私がご一緒する自転車乗りは、だれひとりe電動MTBを買おうという人はいないが、いま電動MTBを買う人は、長くマウンテンバイクに乗ってきた人ではなく、「気軽に山を走りたい」という人なんじゃないか。
苦労して自力で登るより、おカネを払ってクルマやリフトで上まで運んでもらって、いっきに駆け下りる「ダウンヒラー」が増えているが、電動MTBの価格がグッとさがったら、ラクに登って下りを楽しみたい人が、あっというまに増えるんだろうな。
今までは速い速度で下ることで木の根や林道が壊されたが、「登りも速い」電動MTBは、上り坂も破壊するので、倍の速度で山の崩壊が早まるはず
(登りは特にグリップするので、木の根が傷ついたり土が掘り起こされる)。
前述した個人の自転車屋さんも、ものすごい速さで登ってくる電動MTB乗りに、ローインパクトで走るよう「お願い」するらしいが、そんなこと高いカネ出して買ったおじさんには関係ないので、話も聞かず走り去ってしまったり、
「お前の山じゃないだろ!」
と毒づいて行ってしまうとか。
ゆっくり歩くハイカーはまだいいが(それでも後ろからいきなり電動に追い越されて、びっくりするとか)、かなりの速度で走るトレイルランナーは、登りも下りも急には止まれない。
情報発信力の弱い個人店や愛好会では、どうしても大型自転車店にかなわないし、大型店もノルマがあるので、とにかく売らなければならない。
そのうちハイカーやトレラン、はたまた登りと下りのMTB同士で、重大事故が起きるのも時間の問題だろう。
30年ほど前、カメラマンのシューセイさんに誘われて、アメリカはグラミスの砂漠を走りに行った。
ロスから500km南下した、メキシコ国境に近いグラミスは巨大な国立公園で、たくさんのアメリカンライダーやピックアップトラックが走り回っていたが、アメリカでは「オフロードバイクは指定されたパーク内で走ること」
が、法律で決められていて、街中でブロックタイヤのバイクは走れないことを知った。
オフロードバイクから自転車に乗り換えて日本の山を走ると、自転車のほうが自然に対して、はるかにローインパクトだと思ったが、それでも速いライダーや集団で走ると、木の根は痛み、土は掘り返されて崩れてしまう。
おおむかしオートバイメーカーやショップが、売りっぱなしでちゃんと教育しなかったため、日本では「モータースポーツ文化」が根付かず、暴走族や死亡事故が相次いで、いつしか「オートバイは社会の敵」というレッテルが貼られてしまったが、電動MTBもまちがいなく、この流れに乗っているような気がしてならない。
とはいえ免許もいらない電動だし、買うのはおカネはあるけど良識のないオトナでは、近い将来ほんとうに
「電動MTBはMTBパーク以外では走行禁止」
なんて法律や条例ができるんじゃないか。
でも一般の人には電動も普通のMTBも見分けはつかないので、
「MTBは危険な乗り物」
↓
「MTBは指定された場所以外、走行禁止」
なんてことにならなきゃいいが。
私はまだ登りでヒイヒイ言いたいので、今のところ電動は要らないが、あと10年後(5年後?)もまだMTBに乗っていたら、そのころは電動フルサスで、10kgを切るモデルが出ているかもしれないし、新しもの好きの血が騒いで、買ってしまうかもしれない。
この2年間、マウンテンバイクへの世間の風当たりの強さを、現場で体験してきて
「どこかの山を買ってプライベートコースを作りたい」
と漠然と思っていたが、ほんとうにそんな時代がやってきそうな、気がしてならない
。