月曜日午前は仕事で青山まで、ママチャリでお出かけ。
30年前はここ、青山通りと骨董通りの角に「日石のGS」があって、私がいつも給油していた西麻布交差点の三菱GSと「ここ」が、「日本で一番ガソリンが高い」と言われていた。
それでもハイオクで160円。
当時安いところではハイオクが120円だった。
先日墓参りで帰省した長野は、レギュラーでも165円、ハイオクは175円だったので、物価高というか石油が採れない日本は、戦争に踏み切った80年前と変わらず、海外の情勢に振り回されていることを、痛切に感じる。
去年の夏、仕事で田園調布へGSで行ったとき、知らないおじいさんに声をかけられた。
ここは「泣く子も黙る高級住宅街、田園調布」
住宅地の道路わきに停めたので、
「うちの前に停めるな!」
と怒られるのかと思ったら、
「50年ぶりにバイクに乗りたくて、乗ってる人にいろいろ聞いているんです」
って。
そのヒラノさんからひさしぶりに連絡があった。
6月にバイクを買ったらしいが、
「ひとりで乗るのがこわい」って。
ならばと「第三京浜往復40キロプチツーリング」に行ってきた。
買ったのはスズキGSⅩ250Rの
1年ぶりに会うヒラノさんは、以前よりもっと「ヨボヨボ」している印象。
なので、アップハンやトレールバイクなど、もっと乗りやすいのを買えばいいのに、
「250のレーサーレプリカに乗るのが、夢でした」
って。
前回は高速なのにビビッて60キロしか出せず。
なかなか来ないので路肩に停めて、バックミラーを覗いていたら、左端の走行車線を走るヒラノさんの後ろで、トラックや乗用車が渋滞しているのが見えた。
今回はしっかり80キロをキープし、ときには90キロ出して、ちゃんと流れに乗っている。
「ちゃんと乗れてましたよ」
と声をかけたら、
「緊張でドキドキして死にそうです」
って。
あれから有料でマンツーマンの、路上バイク教習を20回ほど受講したらしい。
しっかりウデを磨いたはずだが、バイクを押したり引いたりの「取り回し」は、教えてもらわなかった。
6月に納車されて、ひとりで東京から所沢までツーリングしたとき、コンビニで前向きに停めたバイクを方向転換しようとしたら、「左側」に傾けすぎて立ちゴケ。
起こそうとしたが重くて起こせず、アタマがまっしろに....
教習車のCBⅩ400は大型バンパーがあって、コーチも手伝ってくれたので起こせたが、真横に倒れたバイクは勝手が違う。
さいわい周りにいた人が起こしてくれたらしいが、以来、すっかり自信を無くしてしまった。
平日の午後なので保土谷PAはガラガラ。
後ろから見てもちょっとヨボヨボして、足元がおぼつかない。
このバイク、50万くらいで買えて人気らしいが、250ccレーサーのなかで、一番パワーが無い。
「80キロでも6000回転くらい回ってうるさいので、こわくて100キロは出せない」
とか。
レビューではいいことしか書いてないけど、ほんと雑誌やネットなんていいかげんだなぁと、つくづく思う。
下りの保土谷PAでコーヒー飲んでひと休みしてから、最初のICでおりてUターン。
せっかくなので「取り回し」の練習をしようと、トラックのパーキングレーンに移動したけど、土日はガラガラなのに平日昼間は、たくさんのトラックやトレーラーでほぼ満車。
なんとか空いているところを見つけて、バイクを押したり引いたりの繰り返し。
通り過ぎるクルマのドライバーが、奇異な目で見ていく。
ヒラノさんは脊柱管狭窄症とかで、背骨や腰が痛いそう。
年金暮らしの71歳は毎日午前中だけ、近所のマンションで清掃のバイトをしているが、痛む背中や腰をかばいながら、「これもバイクのため」とがんばっている(らしい)
自宅車庫からバイクを出すのに、「立ちゴケの悪夢」がよみがえって、乗るのをあきらめたことも多いとか。
「でもバイクに乗りたくて乗りたくて、仕方ないんです」
と言いながら、6月納車から4カ月経つのに、300キロしか乗っていないのが、それを物語っている。
立ちゴケは自分が立つ「左側」に倒れたらしい。
ふつうなら自分と反対の「右側」に倒すものだが、ヒラノさんの取り回しを見て、納得した。
腰を落としてシートの角に密着するのが、取り回しのセオリーだと習ったが、ヒラノさんは腰の位置が高くて、シートと密着しているのは太もも。
そして倒れないよう自分側に、よけいにバイクを傾けているので、無駄なチカラがかかって、スムーズに押し引きができない。
たぶん腰が痛いからだろうけど、もっと腰を落としてバイクを立てたら、だいぶラクにできるようになった。
こんなこと、路上教習では教えてくれなかったとか。
運転はまたがってアクセル開ければ、勝手に走ってくれるけど、取り回しはバランスなので、地道な練習が必要。
でも倒したら起こせないので、練習する気にならなかったらしい。
コケてもいいように「スライダー」という、分厚いゴムを取り付けるのと、スペアでクラッチとブレーキレバーを買うことをお勧めしておいた。
YouTubeでライディングやバイク情報、取り回しや引き起こしは、何十回も見て研究したそうだが、そんなもん百聞は一見に如かず、コケてもいいからやったほうが早い。
むかし林道ツーリングに行ったとき、アフリカツインに乗った身長165cmの男性が転倒した。
彼がテールバッグから取り出したのが、クルマの車載工具のジャッキ。
これをハンドル下に入れてクルクル回すと、あら不思議、すこしづつバイクが浮いてくる。
30センチくらい浮いたところで、車体の下に自分のヘルメットを突っ込み、車体が45度になったところで、自分で持ち上げた。
私もファラオで転倒、あばらを折ったとき、痛くて倒れたバイクを起こせなかった。
このときの方法を思い出し、すこし持ち上げたすき間にヘルメットを突っ込み、なんとか起こすことができた。
そんなこと気にしていられなかったが、ヒラノさんにもジャッキを携行することを、お勧めした。
「今日は本当に楽しかったです。特に取り回しは目から何枚も、うろこが落ちました」
って、お礼のメールをいただいた。
次回は海までリベンジツーリング行きたいけど、
「スライダーをつけたらツーリング行きましょう」
と返信しておいたが、やる気はあるのに行動は伴わない人なので、さてどうするか。
71歳、カラダはおじいちゃんだけど、「ココロは少年」の挑戦は、まだまだ続く(と思う)