R1250GS カフェしなの

R1250GS、事故で廃車から買い替えました

精霊

モンゴルの続き

 

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以前ブログに書いたゴビ砂漠での出来事の続き。

 

 

ミスコースして夜の砂漠をさまよい歩いた私は、歩き疲れたので平らなところを見つけて寝ることに。
オオカミに襲われないように、唯一持ち歩いていたタオルを首に巻いて(オオカミやライオンは獲物の「のど」に噛みついてトドメを刺すそうで、武器もなくこれだけ無防備では効果はないか)、枯れ枝を集めて焚き火をして、エマージェンシーブランケットにくるまって横になった。
すぐ眠りに落ちたけど、夜中になにかの気配で目を覚ました。
ざわざわと耳元、というか私の周りで「音」が聞こえる。
風の音ではなく、なにか人がささやいているような....。
オオカミではなさそうだし、ひょっとしてムーミンに出てくる「ニョロニョロ」かも?..なんて真面目に思たけれど、疲れているから気のせいだと自分に言い聞かせて、また寝た。

 

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                              ニョロニョロ

 

朝、明るくなって周りを見渡すと、そこは砂漠のはずれらしく「アシ」がたくさん生えていて、100mほど先には湿地帯らしきものが見える。
そういえば朝のブリーフィングで主催者のヤマダさんが、「ここは大昔に大きな湖があって、数百年のうちに砂漠化が進んで埋まってしまったが、コースの右側は沼地で埋まると出られなくなるので、絶対近づかないように」と言っていたのを思い出した。

 

昨日砂漠を歩いているとき本部にトランシーバーで、バイクと自分のGPSポイントを伝えておいたので、翌朝、捜索ヘリがやってきた。
パンと水をもらいヘリと別れ、最後尾からきたカミオンバレーを運転する、モンゴル人のバイラーさんが、バイクが埋まっている場所まで一緒に歩いてくれた。
GPSのトラッキングを使わなくても、砂漠に続く自分の足跡を追っていけば、バイクまでたどり着けることを、身を持って知った。

 

私の足跡にいろいろな動物の足跡が交差していて、こんな暑い砂漠にも生き物がいることを知って驚いた。
バイラーさんは日本の新聞が読めるほど日本語が上手なので、「これはネズミ」とか「これはキツネ」と教えてくれながら二人で小一時間歩く。
ちょっと大きな足跡があり「これはラクダ?」と私が聞くと、彼は足を止めてポツンとひとこと、「オオカミだ...」と言った。

 

オオカミは必ずどこかで獲物を狙っているらしい。
「アンタよく襲われなかったな」と言われ、「そういえば」と昨晩、砂漠で聞いた変な音の話をした。
話し終わると彼に「ここはむかし大きな湖があって人がたくさん住んでいた。あんたはここの『精霊たち』に守られたんだよ」と言われた。

 

それから埋まったバイクを掘り出しコースを走って、キャンプにたどり着くとすぐスタート。
この日は砂漠の周りを数百キロ走りキャンプに戻るループの日で、山田さんから「キャンプに戻るとき水の上に浮かぶ砂漠を目にするでしょう」と不思議なことを言われたが、キャンプにあと10キロまで近づいたとき、はるか前方に「水の上に浮かぶ砂漠」が幻想的に見え、何故か走りながら涙が止まらなかった.....。

 

砂漠の周りに残った水分が暑さで蒸発して、蜃気楼のように見えるそうだが、ウランバートルから500キロ以上あり、燃料補給や安全面から個人で行くのは困難で、ラリーのような移動手段でないとここまで行けない。
でも砂漠化がますます進行している今では、いずれ見られなくなるかも....。
そうなるまえにもう一度行ってみたいものだ。