蓼科の続き
土曜の夕方になると足よりも上半身、とくに二の腕と肩甲骨周りが痛い。
舗装がガタガタの下りで前方にかかるGを、腕と上半身で抑えながら走っていたので、手首も手のひらもジンジンしている。
娘とお風呂に入ってストレッチしながら、明日は麦草峠まで登ってみよう。
下ってしまったら登らなければならない
反対に登ったらあとは下るだけで、ラクチン。
とりあえず1時間と決めて、たとえ登頂できなくてもそこで折り返せば、1時間半で帰宅できる。
翌日曜日、
6時前に目が覚めて、筋肉痛を確認
どこも痛くない→いける
気が変わらないうちにジャージに着替える。
今日のルートにコンビニはないので、山荘にあったどら焼きを2つ、コーヒーで流し込み、緊急用にどら焼き一つを背中のポケットに入れて出発。
たねやのどら焼きはやっぱり美味しい
電池切れでトリップメーターが動かない。
地図で見たところ山頂まで12キロくらいか。
起きぬけのいきなり上りはやっぱりキツイし、高原の朝は寒い。
ウィンドブレーカーを着こんで出発。
これじゃ一人ヒルクライムだなぁなんて思うが、1時間でどこまで行けるものか。
{下ったら覚悟を決めて登らないとならないが、レースでなくソロの上りはどこでやめてもいいんだよ}
この悪魔のささやきがだんだんつらくなる途中から、アタマをよぎるようになる。
そうだよな~、今ここでやめてもだれも文句言わないしなァ
もう次のカーブ曲がったらやめちゃえば?
ミカエルやルシファーが私の耳元で囁いていく
オートバイならコーナーを見るたび、ワクワクしながら突っ込んで行くところも、自転車だといくら漕いでもなかなかコーナーが近づかない。
この坂を登ったらやめよう
見晴らしのいいところで休憩して帰ろう
一人だとこんなことばかり考えてしまって、体力より精神的に疲れる。
逡巡しているうちに標高も上がって来て、2000mを超えたあたりで景色が開けてきた。
「もうちょっとかな?」と思ったら、いきなり目の前が開けた
ここまで1時間ちょっと。
平均時速10~12キロくらいか。
かいた汗があっというまにひいていく。
暑くて途中で脱いだウィンドブレーカーを着こんでも、震えが止まらないほど寒い。
麦草ヒュッテはまだ営業前らしく、暖かいコーヒーも飲めそうにないので、さっさと下山することに。
携帯電話を山荘に忘れてきたので、なにかあっても連絡が取れない。
スピードを出すと危ないし寒いのでゆっくり下るが、舗装も荒れていて気を抜くと転倒しそうになる。
野生のシカを3度ほど見かけたが、こちらに気がつくとあっというまに林の中に消えていった。
1時間かけて登っても、10分ちょっとで下ってしまうが、これが山登りのだいご味だろう。
山荘に戻ると妻も娘ももう起きていて、「パパおそいじょ~」って怒られてしまった。
妻は今日もまた3時間コースかと思っていたらしい。
携帯を持っていたら「風呂沸かしといて」と言えたが、熱いシャワーをしばらく浴びて、冷え切ったカラダもなんとか常温に戻った。
ひさびさに自転車に乗るのに、2日続けて無茶する私に、
「もっとふだんからドレイみたいなので、練習したほうがいいんじゃないの」と妻が言う。
「・・・・・・ドレイってナニ??」
「あの事務所にある漕いでも進まないヤツ」
ローラー台のことだった
昔の帆船はたくさんの奴隷がオールを漕いでいたが、ナルホドね~
自転車に興味のない人から見たら、ローラー台なんてそんなもんだろう。
自家発電できて値上がりした電気代の足しにでもなるなら、「今日はやらないの?」なんて奥さんから言われて、趣味と実益が兼ねられるけど、人力では豆電球1個点けるのが、精いっぱいとか(役に立たないね~)。
世のなか上には上がいて、たーちゃんのように「毎朝100キロ走って通勤」なんて、猛者(変態?)もいる。
涼しくなるこれから、またワダケンにお山で揉んでもらおう
「パパ かみしばい、はじまるよ~」って、図書館で借りてきた紙芝居を娘が始めた
「おやますわりして~」(お山すわりとはひざを抱えて座ること)
もちろん裏に書いてある物語はまだ読めないが、絵を元にした彼女の妄想で、物語は進んで行く。
(バイクに乗ってるのはパパらしい)
「パパがばいくできたら、びっくりしたらいおんさんととらさんがにげだして、めでたしめでたし」
「はいはくしゅ~ ぱちぱちぱち」
次はもう少しやさしいのを借りて来よう。
日曜の中央高速は午後には渋滞するのが、当たり前になってしまった。
なので今日は夜遅く出発しようと思ったが、夜には台風が来るとのことで、午前11時に山荘をあとにした。
「もう渋滞か」と思ったら、発煙筒を持った警察官が走っていて、事故らしい。
料金所50m手前でクルマが2台追突してして、ハーレーらしきバイクが道路の真ん中に転がっていた。
長時間のドライブだと、子供がチャイルドシートを嫌がって、母親のひざの上に乗ったりして、事故でもあったらかなり危険。
なので車間距離は必要以上に空けているが、後ろから突っ込まれたらひとたまりもない。
やっぱり頑丈なクルマが一番である