BSでエジプトの白砂漠を旅する番組をやっていた。
2004年、初めてファラオに出たとき、この白砂漠を走った。
この時点ではまだアバラは折れていなかったと思う。
ラリー2日目でこの息をのむような、美しい光景に出くわした。
こんな風景は2年前に走ったゴビ砂漠にもなかったので
ラリー中なのにバイクを停めて、初めて見るマッシュルーム型の奇岩を触ったり、写真を撮っていた(その後の転倒でカメラを壊し、写真は残っていない)。
砂が白いところは「フェシュフェシュ」
龍角散のように細かい砂が、深いところは1mくらいあり、数十mから数キロまで続いている。
日野レンジャーでもフェシュフェシュを避けて、何キロも迂回することがあるという。
路面に大きなギャップがあり、トップライダーはかっこよくジャンプを決めるので、ラリーでおなじみのフランスの、「マインドルーフォト」のプロカメラマンが、フェシュフェシュを超えたところで待機していた。
かっこよくジャンプできない私でも、数メートル飛んでかなりビビったのを、今でも鮮やかに思い出す。
このときはフェシュフェシュの長さが50mくらいだったので、アクセルを開けてなんとか超えられたが、深いと前輪がハマって、おもいきり前転する。
フェシュフェシュにハマって出られず、リタイアしたライダーもいたほどで、
その日のキャンプ地では、ドリフのコントのように全身真っ白のライダーを、何人も見かけた。
ギザのスタートから2日間、500kmくらい走っていたので、サハラ砂漠のかなり奥地かと思っていたが、BSのテレビクルーが現地ガイドの車に乗って、ギザから100kmくらいにある白砂漠を取材していたので、町から意外に近かったらしい。
ラリーのルートはまっすぐ走れば100kmのところを、蛇行や遠回りを繰り返させて何倍にも距離を伸ばすが、どこも同じ景色なので気が付かないことが多い(って私だけ?)。
バイクや車のワダチがたくさんあるからと、安心してついて行ったら、
いつのまにかワダチが無くなる…..。
なんてこともよくあるが、前日のルートの逆走だったり、去年のルートだったり。
砂漠は風が吹いてワダチが消えると思っていたが、意外に何年たってもしっかり残っているらしく、何度だまされたことか(私だけ?…..)
それでもファラオラリーは3月に開催するらしい。
毎年10月に開催されるが、去年はエジプトテロの影響で延期になっていた。
さすがに再延期はできないのか、それとも主催者のイタリア人に
「テロには絶対遭わない」という、よほどの自信があるのか、
ヨーロッパを中心に多数のエントリーがあるようだ。
昨日、仕事で上尾に行った帰り、久しぶりにKTM埼玉のF宅さんに会いたくて、お店を訪ねた。
あいにくスペイン研修中とかで金曜帰国らしいが、
ここでもエジプトの砂漠ライディングツアーをやっている。
若いスタッフに
「エジプトもテロで大変では?」と聞くと
「走るのはカイロから遠く離れた田舎なので、全然大丈夫ですよ」と話していた。
田舎だからテロリストがいないなんて、何で言えるのか。
飛行機は必ずカイロ国際空港に到着し、砂漠のある町まで車での移動になる。
都会のカイロより田舎のほうが人目に付きづらく、襲撃や誘拐はやりやすいはず。
中東でもエジプトは特に親欧米の国なので、
イスラム過激派からすれば明らかな「敵国」。
誰かと誰かが手を組む可能性は、いくらでも考えられる。
むかし湾岸戦争が起きたとき、顔見知りのイラン人に
「フセインとブッシュ、どちらが嫌いか?」と尋ねた。
てっきり「フセイン」と答えるかと思ったら、
「もちろんブッシュさ、だって彼はイスラム教徒じゃないから」と言われた。
あとになって思えば本当に愚問だったが、彼らにとって信じられる身内は、
同じ教義を信じる信徒と一族だけで、あとはみんな「異教徒」。
敵対しているのは周知のとおり。
イスラムの教えも知らない日本人が、
「まさか自分は大丈夫だろう」という過信が、被害につながるかもしれない。
ハロウィンで馬鹿騒ぎをし、クリスマスにケーキを食べ、元日は神社に初詣、
バレンタインにはチョコをもらって喜ぶ.....。
あらゆる宗教がごちゃまぜながらも、安全な日本で暮らす我々は、本当はすでに身近に迫っている危険に、まったく気が付かないでいる。
海外に行ってまず驚くのは、空港で自動小銃を抱えた迷彩服の警備兵が、たくさんいること。
日本の空港で自衛隊や警察が、武器を手に厳しい目で警備していることなどありえないが、これでテロを防げるのか。
先日はインドに旅行した女子大生が、現地で暴行されたニュースがあった。
たしか少し前にも同じような事件があったばかり。
インドや中東など辺境地の一人旅が好きな、知人の20代女性は
「あぶないところは行かないから、私はぜったい大丈夫」
と言っている。
テレビで邦人女性が被害に遭うたび、彼女でないことを祈っているが、
ヨーロッパもアメリカもアジアでさえも、海外に危険でない国などないことに、
被害者になる前に早く気付いてほしい。
日本にいる外国人をすべて追い出し、江戸時代のように「鎖国」できるならいいが、
外国人観光客を呼び込むことばかり考えている今の風潮には、危なっかしさが感じられてならない。
「人類みな兄弟」という盲信を捨てて、自分の身は自分で守ることに、
日本人全員がそろそろ気が付かないと、取り返しのつかないことが起きる気がしてならない。