R1250GS カフェしなの

R1250GS、事故で廃車から買い替えました

ふるさとがなくなるということ

父が亡くなり母も入院中の実家は、ずっと空き家のまま。
正月休みは長野の実家に帰りたかったが、私たちが帰ると言うと実家から30分のところに住む姉が、わざわざ家中の窓を開けて空気の入れ替えをしたり、掃除をしておいてくれる。
 
雪国の冬は水道管を電熱線ヒーターで暖めておかないと、凍結して破裂するので、だれもいない実家は水道の元栓を止めている。
これも姉が寒いなか開栓して、ヒーターの電源も入れてくれるのだが、
「自分でやるからなにもしなくていいよ」といっても、そこは律儀な田舎の人。
長男なのに何もできない自分が、申し訳ないやら情けないやら......。
 
両親が健在だったころは、帰京する私のクルマが通りの角を曲がるまで、家の前で見送ってくれる母親との別れが辛かったが、今は別な意味で軽い気持ちで帰京できない。
 
今年は長野も大雪
誰もいない家の前は、雪かきされないまま凍った雪が、道路を覆っているはず。
せめて雪かきのためだけでも帰省したかったが、家族がいるとそうもいかない。
 
姉の「寒いから暖かくなったら帰っておいで」の言葉に甘え、正月はずっと東京にいた。
案の定、3が日は大雪で、上信越道も一部通行止めになったとか。
 
元旦はゆっくり起きて、近所の戸越八幡へ初詣。
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何時間も並ぶ有名神社と違い、並んでいても20分ほどでお参りできるのがいい。

めずらしく東京は雪が舞い、「パパ~おおゆきだよ~」と大騒ぎする、都会っ子。
この程度で騒いでいては、豪雪に苦しむ地方の人に申し訳ない。
 
夕方から妻の実家で新年会
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毎年、近所の高級割烹に注文する、10万円のおせちをいただくが、
「冷めた料理はたべたくない」という私は、どんな高級料理もありがたみを感じない、バチ当たり者。
義母も年末の忙しいときに黒豆を煮たり、ローストビーフを作ったりと大変なので、
「来年はホテルの高級中華を食べに行こう」と、全員の意見が一致した。
 
食い道楽の義父母に言わせれば、
「観光客相手の中華街に名店は無くなった」らしい。
中華街は年に一度、横浜マラソンのときしか行かないが、たしかに観光客相手の流れ作業のなか、苦労知らずの3世4世が作っている料理では、外国のタイヤ屋の星もつかないし、味が落ちるのも仕方ないだろう。
 
でも元旦からまた新年会では、来年の正月も実家に帰れないってことか.......。
 
「お母さんが生きているうちは、実家は残しておこう」と姉と話しているが、
遠くない未来、かならず迎えなければならない現実。
 
築30年の無駄に大きな日本家屋の実家は、いくら姉が掃除してくれてもかび臭く、確実に「傷んで」いるのを感じる。
 
軽井沢のように東京から1時間ちょっとなら、「別荘」として残す手もあるが、250km、クルマで3時間以上かかるうえに、どこにでもある地方都市のような街並みでは、家族も行きたがらない。
 
東京生まれの義父は蓼科に山荘を持ったが、これもあと数年後、義父がクルマの運転をできなくなったら、不便な山の家に誰が行くのか。
中央道の慢性渋滞が解消されない限り、蓼科はクルマで行く気にならない。
 
 実家を処分したあと、姉の家に家族で泊めてもらうわけにもいかず、地元の旅館に泊まってまで帰省するかと言われれば、正直分からない。
田舎の実家を処分した、都会に住む人生の先輩方の意見を聞くと、
「いつのまにか田舎に足が向かなくなった」と同じ答えが返ってきた。
「墓参りでさえ、一人で日帰りで行っている」とも。
 
「実家が無くなれば故郷もなくなる」
 
すべて田舎を捨てた自分の責任だが、帰る場所が無くなるなんて、10年前なら思いもしなかったことが、残酷な現実として目の前に迫っている。
 
私にもっと甲斐性があれば、実家を小さな家に建て替えて、月の半分は田舎暮らしも可能だろうが、子供が自立するまではできそうもないし、妻は「軽井沢なら別荘があってもいいかな」って.......。
 
60歳を目標に軽井沢のはずれにでも、小さな家が持てれば長野との縁は切れないのかも。
 
神奈川に暮らす姉の長男も30歳。
「今帰らないと、これで結婚でもしたらもう帰れないぞ」と、会うたびに言っているが、彼には現実味が無いらしい。
私も若いころは親が死ぬなんて、想像もしなかったのだから、仕方ないことか。
 
私のように営業しかできない無能力者と違い、彼は機械設計の仕事らしいので、いくら仕事が無いという田舎でも、贅沢を言わなければ仕事はあるんじゃないか。
 
幸いにも私は自営業なので、時間も金もある程度は自由になるが、サラリーマンの彼が結婚して子供でも出来れば、田舎の人が驚くくらい高いけれど小さな家を買って、住宅ローンに追われる人生が待っている。
 
10年後、20年後、望郷の念に駆られるころには、もう身動きがとれず、親に何かあっても面倒を見ることはできない。
 
28歳の弟が松本の会社の独身寮にいるが、ちょっと頼りない彼は結婚はおろか、今まで彼女ができた話も聞いたことが無いので、ずっと一人かもしれない。
 
姉夫婦は「おまえたちの好きなように生きろ」と言っているが、去年、義兄と飲んだときこんな話をしたら、ちょっと体調を崩していたこともあり、考え込んでしまった。
 
もうじき父の三回忌だが、姉に聞くと
「みんな年を取って来てもらうのが悪いから、やらないかもしれない」
とのことだった。
本当なら長男の私がやらなければならないことなので、それ以上は言えなかったが、今月か来月には一度、墓参りと母の見舞いに帰省したい。