朝夕、娘を保育園に送り迎えする途中に、いつも行列している「六厘舎」というラーメン屋がある
(正確には「つけ麺屋」らしい)。
この猛暑のなか平日の昼間でも、サラリーマン風な人たちがじっと待っていて、「お前ら仕事してんのか」と、いつも思いながら通り過ぎる。
昨日のニュースでこの店が、行列による近所迷惑のため、今月末で閉店すると書かれていた。
今日も4時過ぎに通ったら、閉店セールなのか普段の倍以上(100人以上)が並んでいた(気温37度.....)。
確かに道路まではみ出していて、人は通れないわ、クルマの通行もちょっと危ない。
昔は親や周りの人から、立ち食いや行列してご飯を食べるのは、行儀が悪いと教わった。
私は並んで食べるほど食通ではないし、なにより待っている時間がもったいないので、並ぶ店で食べたことがない。
ラーメンなら砂漠のキャンプで食べるチャルメラが、世界で一番うまいだろう。
疲れ切った日本人のカラダには、あのしょうゆ味が何よりもごちそうで、具なんかなくてもあそこでしか食べられない、最高のぜいたくだと思う。
それでもインド館だったか、銀色に輝くカレーポットのカレーを、ご飯にかけて食べるというのが、子供心になにかおごそかな「儀式」のようで、今でも記憶に残っている
(田舎ではカレーライスでなくライスカレーと呼んで、カレーが最初からご飯にかかっていたので、驚きだった)。
そのあと入ったカナダ館に(これも空いていた)、父親と手をつないで入館したはずが、一回りして外に出たら、知らない外人さんと手をつないでいたのには、心底驚いた(田舎には外人さんがいないので)。
そのまま迷子センターに連れて行かれ、コンパニオンのきれいなオネーサン達に遊んでもらったのも、なぜかよく覚えている.......。
幸い今は事務所の2階が自宅なので、昼どき用事がないときは、自宅のキッチンで簡単に昼食を済ませている。
もっとも近所に美味い店があれば、喜んで食べに行くのだが、この「戸越銀座」という街には、およそ美味い店がない(らしい)。
数年前引っ越したとき、先祖代々住んでいるという近所のご主人に、「昼めしの美味い店はありますか?」と聞いたところ、「ない」と即答された。
知りあう人みんなに聞いても「ない」というので、いくらなんでもと一人で食べ歩いてみた。
ラーメン屋から定食屋、すし屋、そば屋.......。
ひと通り食べてみて、確かに美味い店がなかった(と思う)。
街おこしの成功例として、戸越銀座は一部で有名らしいが(商店街がとても長いらしい)、有名になったぶん家賃が高くなり、駅前商店街は個人商店がどんどん消えて、どこにでもある居酒屋チェーンか、ファーストフードとコンビニだけになってしまった。
コンビニ弁当は嫌いだし、そんなもの食べるくらいなら、自宅で自分で調理したほうが100倍うまいと思うのは、近所の皆さんも同じらしい。
遠方から訪ねてきた知人が、「せっかく{有名な}戸越銀座に来たんだから、どこか美味しい店を教えて」と、よく聞かれる。
イタリアンが食べたいという人には、駅向こうのサイゼリアが一番美味いと、教えるようにしている。
ハンバーガーなら駅前に黄色に赤い字で、「M」って店が美味いと教えたら、食べに行った知人から「マックじゃないか」と、怒って電話がかかってきた。
中華なら餃子のうまい「王将」って店が駅前にある.....。
「池波正太郎が通ったタンシチューのうまい店」というのもあった。
これは行かねばとさっそく食べに行ったが、タンシチューはちょっと焦げた味がした(以来カキフライを食べている)
そんななかで唯一食べに行くのは、「じゅーじゅー焼き」という鉄板焼きが名物の、カウンターだけの店。
引っ越してきたばかりの頃、ご近所の菅原Jr、テルちゃんに連れて行ってもらったのが最初だが、以来数カ月に一度は無性に食べたくなる、不思議な味(テルちゃんは20年来、通っているらしい)。
でも夜しかやっていないし、しょっちゅうは食べられないので、ランチはやっぱり自宅かな。
バブルの頃、環七に行列が出来て大渋滞する、九州ラーメンの店があった(今もあるけど)。
オーナーは時代の寵児として、テレビやメディアに引っ張りだこだったけど、店を大きくしたとたん誰も並ばなくなってしまった。
海外で並んでいるなと思ったら、だいだいはレジ打ちが遅いか、タダで何かもらうための行列。
なので来日したガイジンさんは、お店のレジ打ちの速さに感激するし、行列してまで食べる日本人が、理解できない
あのつけ麺屋、明日はもっと大変なことになるんだろうな。
(私は絶対行かないけど)