カフェしなの

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霊峰 御嶽山

子供のころ「疳の虫(かんのむし)」が強かった私は、年に一度、鼻や口がただれた。
そのとき祖母に連れて行かれたのが、近所に住むMさんというおばさんだった。
 
Mさんが私の手のひらに「墨」でなにか字を書いて、握りしめること数分
「ひらいてごらん」と言われ手をかざすと、指の先から白い鼻毛のようなものが数本、ゆらゆらと伸びていく。
 
これが「かんのむし」とかで、ウソのように治ってしまった。
 
腰痛で歩けなかった祖母も、自宅に来てくれたMさんが腰に手を当てて、なにか呪文を唱えると、すたすた歩けるように。
 
Mさんは女性では珍しい密教の「修験者」で、私の手に書いたのは「梵字」らしい。
毎年、修業のため御嶽山に登り、山籠もりをしていた。
 
 
私が御嶽山に行ったのは10年前
夏休みで帰省したとき母親から
「明日Mさんと御嶽山にお参りに行くけど、お前も行かないか?」と誘われた。
 
日ごろ両親と離れて暮らしていて、たいした親孝行もできなかったので、、
「こんなことで喜んでくれるなら」と一緒に行くことに。
 
翌朝、Mさんの自宅に行くと、40人乗りの大型観光バスと大勢の人がいて驚いた。
 
今までMさんの「治療」を受けた人や、近所の信心深い人たちがバスに乗り込んで、飲めや歌えやの大宴会をしながら、御嶽山に向かった。
 
今回御嶽山が噴火して、長野の実家は大丈夫かと、たくさんの人に連絡をいただいた。
同じ長野県でも私の実家から御嶽山は170キロ離れているので、今のところ何も被害はない。
 
地元の姉に電話すると
「それより御嶽山の噴火で、浅間山草津白根が噴火しないかが心配」
と言っていた。
 
浅間ファンライドによく行っていた10年前、浅間山が噴火した。
金曜日に車で1台だけ前泊したが、遠目にも暗闇に真っ赤な火口が見えて、恐ろしかった。
たぶん大丈夫ということで開催されたが、今回の御嶽山の噴火を見て、しょせん自然には逆らえないことを思い知らされた。
 
長野県人は浅間山が噴火しても、風向きで群馬側に流れるので、こちらは心配ないと思っている人が多い。
 
毎年、異常気象と騒がれている現在、そんな迷言を信用していていいのかと思うが、信じないとその場に住んでいられないのだろう。
 
 オフに乗り始めたころ、富士山にもよく行った。
当時は噴火なんてアタマの隅にも思わなかったが、これもただラッキーだっただけかも
富士の斜面を走ったことのある人ならおわかりだろうが、ところどころ垂直にえぐれた穴だらけ。
ザクザクの火山灰は砂丘と同じで、下りでもアクセルを開けていないと、フロントが潜って前転するので、登りより下りのほうが何倍も神経を使う。
迫りくる火砕流のなかをトムクルーズのようにバイクで駆け降りるなんて、私には絶対無理......
 
火山学者がいつ噴火してもおかしくないと言っているなか、6月に参加した富士ヒルクライムも、たまたま なにも起きなかっただけか。
 
ゴールの五合目から噴火に驚いた6500人の自転車乗りが、一斉に下界を目指して走り出したら.....。
想像するだけで恐ろしい。
 
湘南の海岸近くに引っ越した知人いわく
「いつ来るかわからない津波を心配してても、しかたない」
 
その時は運が悪かったとあきらめられるか。
 
「人生は太くみじかく生きる」
 
昔はこんなことを言ってうそぶいていた私だが、子供が生まれてから、
 
「孫をこの手に抱くまでは」
 
「いやいや、どうせなら{ひ孫}も抱きたい」
 
そんな壮大な野望をひそかに持ち、人一倍「生」への執着が強くなり、
できるだけ危険なことはやらないようになってきた。
 
娘が18で「できちゃった婚」でもしてくれれば、66で孫が抱ける。
 
その孫がまた18でひ孫を産んでくれれば、84でひ孫が抱ける。
 
あと数年もすれば娘は相手をしてくれなくなるから、こんどはその「孫」を溺愛したい。
こんな妄想にふける日々である......。
 
18から20歳まで山梨で過ごした2年間。
「山はあってもやまなしけん」と言われるくらい、長野と並んで山が多い。
 
高校時代ワンゲル部主将だった同級生Yに誘われて、週末ごとにいろいろな山に登ったが、知り合いが遭難して死んだとき、葬式で彼の母堂が泣く姿が自分の母親と重なり、以来、登山はやめてしまった。
 
今回の御嶽山でも、若くして亡くなった方の親御さんが悲しむ姿を見て、
親より先に死ぬ「逆縁」が最大の親不孝だと、菩提寺の住職に言われた言葉を、改めて思い出した。
 
子供のころから無茶をして(無茶でないはずがなぜか無茶になってしまう.....)、本当にいま生きているのが不思議なくらいだが、自分の中では海や空、山など、「地に足がつかないスポーツはしない」をモットーにしている。
 
「砂漠だってあぶないでしょ」と言われるが、とりあえず地に足がついているので、足さえ動けば歩いて行けるし、ダメなら数日間そこにいれば、旅行者や地元の人が通るはず。
砂漠の単独ツーリングなら野垂れ死ぬかもしれないが、ラリーのような管理されたレースなら、たぶん大丈夫じゃないかと思っている........
 
 
Mさんと行った御嶽山巡礼バスツアー
その日は御嶽教例大祭なのか、全国から大勢の人が集まっていて、盛大にかがり火を焚いていた。
高齢で山に登れない母の代わりに、御来光を目指して深夜に登山を始めたが、あいにくの雨で途中で断念。
 
以来、御嶽山にはいっていないし、たぶん登ることはないだろう。
 
Mさんは数年前、93歳で天に召されたとか。
あの世でもたくさんの人を助けているだろう。
 
携帯電話がなかった昔、山に登るときは登山届を出すのが当たり前だったが、今はお手軽な登山ブーム。
個人情報保護とか言って届けを出さない人が多いので、登山者数の正確な情報は誰にもわからないはず。
 
甥っ子のT君も会社の仲間と山登りをするらしい。
行くなとは言わないが親を悲しませないためにも、山や気象の情報を正確に把握して、日程を伝えてから事に臨んでほしい。