むかし土地を担保にカネを貸したけど逃げられて、いくらでもいいので買わないかと、知り合いに言われ見に行くことに。
夏用スクリーンを冬用に交換して
行ったのは神奈川県の足柄山のふもと。
透明の大井松田ICから山を登って10キロ。
隠れ里のような趣の集落に出た。
あとで渓流釣り好きアライサンに聞いたら、
「マス釣りで有名だよ」
とのこと。
足柄や金時(きんとき)は20年前くらいまでなら、オフロードバイクでも走ることができたので、先日のキャンプでバイク乗りの人に話したら
「あのあたりの山は昔よく走り回った」
そう。
「物件」はこの山を登ったあたりらしい。
正式な「売り物」ではないので、もらった資料は地図と公図(むかしの地番が載っているもの)だけ。
前回行った茨城の20万坪の山もそうだが、あとは現地を見ながら検討をつける。
GSであがるのに躊躇するほどの激坂沿いに、数件の家が建っている。
たぶんこの左の斜面らしいが、今の持ち主(金を貸した人)も現地を見ていないので、分からない。
斜面を登って「公図」と照らし合わせると、たぶんここだろう。
奥の家に話しを聞こうと思ったが、平日なので仕事に出ているのか?
はたまた空き家なのか?だれもいなかった。
ここにテントを張ってキャンプするならいいが、家を建てるには土の斜面が「崩落」するかもしれないので、鉄筋コンクリートで「擁壁(ようへき)」を作らないと、建築許可は下りないかも。
この土地をタダでもらっても、擁壁に数百万円(場合によっては1000万以上)工事費がかかっては、正直言って魅力がない(建築費も平地に建てるよりかかるはず)
せっかく来たのだから一応、まわりを見て回る。
山の急斜面に段々畑のように100区画くらいが、更地(というかジャングル)のまま放置されている。
あとでネットで調べたら40年以上前に、別荘地として分譲されたらしい。
家は10軒ほど建っているが、ほとんどが空き家、というより廃屋が多い。
でも今回見に来た土地よりも、山の上のほうが見晴らしはいいし、家を建て替えるより修繕すればまだ使えそうだから、買うならこっちのほうがいいだろう。
下界を見下ろすだろうバブリーな作りの家も、お化け屋敷のよう
一見フツーの家もある。
だれか住んでいたら住み心地を聞いてみようと思ったが、やっぱり空き家だった。
でも障子が破れっぱなしなので、やっぱり廃屋かも。
この奥には家が無いので、道路も倒木が倒れたまま。
ここが一番上。家が3軒建っていて、住んでいる雰囲気。
クルマが停まっていて洗濯物が見えたのでピンポンすると、中年の奥さんが出てきた。
正直こんな山奥に訪ねてくる人は、宅急便か郵便屋さんくらい(あとアポ電強盗とか
(*_*))。
こちらもかなりアヤシイ風体に見えるはずなので、近くの土地を見に来た旨を説明したら、理解してもらえたような(よく笑う気さくな奥さんでよかった)
自然豊かな場所に住みたいと20年前、移住されたそう。
リビングからは紅葉の山々が一望でき、最高のロケーションだが、
「景色はすぐ飽きました」
って。
湘南の海を見下ろす高台に家を買った知り合いも、
「海の近くに住みたかったけど、もう見飽きた」
って(ニンゲンッテゼイタクダネ)
いま「定住」しているのは並びの3軒だけで、別荘として使っていた人も、最近見なくなったそう。
すぐ隣は静岡で小田原も近いので、雪は降らいないと思ったら、毎年数回は降るそう。
ここは別荘地の「私道」なので、町の除雪車が来てくれない。
大雪が降ったときは4日くらい町に下りられず、「孤立」したそう。
以来、雪の予報のときは食料を買いだめし、クルマは下の集落に置かせてもらい、融雪のため「塩カル」を撒いているそう。
子供さんの学校へは毎日、奥さんがクルマで送り迎えしていたそうで、四駆でも登るのを躊躇する、つづら折れの激坂を毎日走っていたら
「ペーパードライバーだったのに、かなり運転がうまくなりました」
とか。
ただ病院などのインフラがないので、いざというときの心配は尽きないそうで、
「あと数年したら町に帰るかも」
とも言っていた。
こんな「忘れられた別荘地」は日本中にいくらでもあり、たいがいは分譲した不動産業者もつぶれているので、荒れた道路や水道などライフラインの修復も、すくない住人たちで負担しないとならず、いつしか限界集落になってしまうもの。
でもこの絶景には心惹かれる。
数十年前、別荘業者に案内された人たちも、この景色に魅了されてここを買ったんだろうなぁ。
上のほうの土地なんて、謄本で所有者を調べてあたってみれば、親や親族から相続したまま一度も行かず、毎年、固定資産税だけ払い続けている人が、タダでもいいからもらってくれなんて人が、たぶんいるだろう。
一番上ならウラはもう「山」なので、自転車でトレイル探しの冒険もできそう。
「お持ちの別荘地を買いたい人がいます」
なんて勧誘の電話をかけてくる不動産業者がいて、「売却手続きに数十万円が必要」と、ありもしない架空の話に、現金をだまし取られる事件があとを絶たない。
ネットで検索するとふもとの集落には、自治体の「空き家バンク」などで移住する人も増えているらしい。
田舎暮らしをしたければ、山の上よりふもとの集落のほうが、暮らしやすいかもしれない。
奥さんも言っていたが、クルマがあれば東京に出るのも1時間ちょっと(戸越銀座から70km)、町まで出れば買い物もできるので、山奥だけど比較的便利とか。
何十年も放置されてジャングル状態の土地を見て、平家物語の「諸行無常の響きあり」が頭に浮かんだ。
まだまだ理想の土地探しの旅は続く。